
マンジャロGIP/GLP-1受容体作動薬を含むGLP1製剤でのダイエット・糖尿病治療を受けられている方で抜け毛(脱毛)が気になる方は少なくないと言われています。2026年に医学誌BMJへ掲載された研究では、GLP-1製剤を使った人は、脱毛を起こす割合が少し高いという結果でした。ただし、実数でみた増加は年間1000人あたり約2件から3件で、薬が脱毛の直接原因だと証明した研究ではありません。
この記事の結論だけ先に
- 実数では少ない増加でした。GLP-1製剤では、他薬剤と比較し年間1000人あたり使用し約2-3人程度の増加という結果でした。
- 増加が最もはっきりしていたのは、毛根に傷跡を残さないタイプの脱毛です(非瘢痕性脱毛)。体重減少や食事量・栄養摂取状況の変化が関係した可能性があります。
- 薬の直接作用かどうかは分かっていません。研究は2型糖尿病の人が対象で、糖尿病のない人の減量に同じ数字をそのまま当てはめることはできません。
研究で分かった脱毛の実数
この研究は米国ペンシルベニア大学の診療記録を使い、2型糖尿病の成人を対象に、①GLP-1製剤を新しく始めた人と、②SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬という他の種類の糖尿病治療薬を始めた人を、年齢や健康状態などの条件をできるだけそろえて比べたものです。追跡期間は最大5年でした。[1]
実数の差は年間1000人あたり1.87件または2.64件でした。1000人中2-3人前後というとそこまで多くはないような気もします。
〈GLP-1製剤と他剤との比較 まとめ〉
|
比較した薬 |
対象者数 |
年間1000人あたり |
GLP-1製剤の差 |
|
vs. SGLT2阻害薬 |
GLP-1 12,004人 |
GLP-1 6.91人 |
1.87人 |
|
vs. DPP-4阻害薬 |
GLP-1 11,964人 |
GLP-1 6.53人 |
2.64人 |
多かったのは毛根に傷跡を残さない脱毛
脱毛にはいくつかの種類があります。この研究で増加が一貫していたのは、毛根が傷ついて失われるタイプではなく、頭皮に傷跡を残さないタイプでした。これを非瘢痕性脱毛と言います。円形脱毛症や、男性型・女性型の薄毛(AGA・FAGA)には明確な増加が確認されませんでした。[1]
非瘢痕性脱毛には、急な減量、発熱や手術、強いストレス、食事量の不足などをきっかけに、成長中の髪が一時的に休む状態も含まれます。一般にはきっかけが整うと改善することがありますが、今回の研究は脱毛の重さ、続いた期間、回復したかどうかまでは調べられていません。
脱毛が起こる理由として考えられること
GLP-1製剤が毛根へ直接作用して脱毛を起こすことは証明されていません。研究者は、
- 体重が短期間に大きく減ること
- 食欲が下がって食事量が減ること
- たんぱく質・鉄・亜鉛など髪の成長に必要な栄養が不足すること
などを候補として挙げており、複数の要因が重なっている可能性もあります。[1]
また、この研究結果では脱毛の診断が治療開始後の早い時期に集まり、治療開始から12か月を迎える少し前に最も多くなりました。開始から1年ほどは、体重の減り方だけでなく、食事量や抜け毛の変化にも気を配り、以下のような不足しがちな栄養素をあらかじめよく摂取することも大切です。
糖尿病そのものと脱毛の関係
2型糖尿病と一部の脱毛との関連を示した研究はあります。ただし、すべての糖尿病患者が髪を失いやすいとまでは言えず、脱毛の種類や対象者によって結果は異なります。
米国の黒人女性5,389人を調べた研究では、2型糖尿病がある人の重い頭頂部脱毛は糖尿病の無い方と比較し1.68倍、糖尿病歴が10年以上の人では2.05倍でした。これは特定の人種と性別に多い頭頂部脱毛についての結果で、一般的な薄毛や円形脱毛症へそのまま当てはめることはできません。[2]
BMJ研究では比較した全員が2型糖尿病でした。糖尿病という背景は両方のグループに共通しているため、それだけでGLP-1製剤と比較薬の差を説明することはできません。一方で、糖尿病のない人との比較は行っていないため、年間1000人あたり約7件という数字を、糖尿病がない減量目的の人へ直接当てはめることもできません。
治療中に確認したいこと
- 急ぎすぎない減量を心がけます。食事を極端に減らすと、髪の材料になる栄養を確保しにくくなります。肥満の多い米国においても、概ね1〜2%/月あたりの減量が推奨されています。
- たんぱく質を含む食事を基本にします。鉄や亜鉛なども必要ですが、サプリメントを自己判断で大量に飲むのではなく、食事内容や検査結果を担当医師と確認しましょう。
- 抜け毛の時期と量を記録します。薬を始めた日、体重の変化、発熱・手術・強いストレス、ほかの薬の変更もメモしておくと良いかもしれません。
- 自己判断で薬を中止しません。脱毛が気になるときは処方した医師へ相談し、必要に応じて貧血、甲状腺、栄養状態などほかの原因も確認します。
早めに相談したい変化
- 抜け毛が急に増えた
- 円形やまだらに抜ける
- 頭皮に赤み・痛み・強いかゆみ・かさぶたがある
- 毛穴が見えにくく光沢のある部分がある
- 眉毛や体毛も抜ける
- 疲れや息切れ等がある
このような症状がある場合は、早めに相談しましょう。頭皮の症状が強い場合や原因が分かりにくい場合は、皮膚科での確認が役立ちます。
この研究からは分からないこと
-
診療記録を後から調べた研究のため、薬が脱毛を起こしたと断定はできません。
-
医療機関を受診して記録された脱毛だけが対象で、軽い抜け毛は含まれていない可能性があります。
-
脱毛の重さ、続いた期間、薬をやめた後や体重が安定した後に回復したかは調べられていません。
-
対象は米国の医療機関を受診した2型糖尿病の成人です。糖尿病のない肥満治療だけを目的とするや、そもそも日本人に同じ結果になるとは限りません。
よくある質問
まとめ
BMJの研究では、GLP-1製剤を使った2型糖尿病の成人において抜け毛が増える確率は年間1000人あたり約2-3人とそれほど多くはありませんでした。
主に増えたのは毛根に傷跡を残さないタイプの非瘢痕性脱毛と呼ばれる脱毛です。急な体重減少や食事・栄養の変化が関係した可能性はありますが、薬の直接作用かどうかはまだ分かっていません。数字を過度に恐れる必要はありませんが、治療開始後は急ぎすぎない減量と無理のない食事を意識し、抜け毛が気になるときは自己判断で中止せず医師へ相談しましょう。
当院へのご相談
わらび内科・循環器内科クリニックの肥満外来・ダイエット外来では、体重の変化と食事量、副作用の発現を観察しながら治療を進めています。今までなかなか痩せられなかった方やすでに健康被害が出てきている方、肥満により睡眠時無呼吸症候群を発症した方、メディカルダイエットに興味がある方、抜け毛・薄毛も一緒に治療をしたい方は是非ご相談ください。
参考文献
- Tang H, Zhang B, Lu Y, et al. Risk of hair loss associated with glucagon-like peptide-1 receptor agonists in adults with type 2 diabetes: target trial emulation. BMJ. 2026;394:e100077. doi:10.1136/bmj-2026-100077
- Coogan PF, Bethea TN, Cozier YC, et al. Association of type 2 diabetes with central-scalp hair loss in a large cohort study of African American women. Int J Womens Dermatol. 2019;5(4):261-266. doi:10.1016/j.ijwd.2019.05.010
執筆監修
髙橋剛士 総合内科専門医・循環器内科専門医
わらび内科・循環器内科クリニック 院長
医療広告に関する注意事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的とし、個別の診断や治療を行うものではありません。治療の効果や副作用には個人差があります。GLP-1製剤を含む医薬品は、医師の診察と説明を受けたうえで使用してください。











