
「最近ずっと足がむくんでいる」「顔までむくむようになった」「押すとへこんだまま戻らない」――。むくみ(浮腫)が何日も続くと、どこか悪いのではないかと不安になりますよね。
むくみの多くは病気ではありません。しかし、心臓・腎臓・肝臓・甲状腺など、内臓の不調が最初に「むくみ」として現れることがあるのも事実です。この記事では、むくみの背後に隠れていることがある病気と、受診の目安をわかりやすく解説します。
まずはセルフチェック:押して戻らないむくみに注意
すねの内側の骨の上を、指で5秒ほどしっかり押してみてください。
指を離したあと、へこみが残ってなかなか戻らない場合は、皮膚の下に水分がたまっている状態です。これが数日以上続く、あるいはだんだんひどくなるようであれば、一度医療機関で調べてもらうことをおすすめします。
あわせて、体重の変化も大切な手がかりです。むくみは「体にたまった水分の重さ」として体重に表れます。食べる量が変わらないのに数日で2〜3kg増えたときは、体に水がたまっているサインかもしれません。
「心配いらないむくみ」と「調べたほうがよいむくみ」の大まかな違い
すべてのむくみを心配する必要はありません。目安として、次のように考えるとわかりやすくなります。
- 心配の少ないむくみ:夕方に出て翌朝には引いている/立ち仕事・飲酒・塩分の多い食事など思い当たる原因がある/体調は普段どおり
- 調べたほうがよいむくみ:朝になっても引かない/日ごとに悪化する/体重増加・息切れ・だるさなど他の症状を伴う/片足だけ腫れている
「調べたほうがよいむくみ」に当てはまる場合、次のような病気が関係していることがあります。
むくみの原因になる主な病気
心臓の病気(心不全)
心臓のポンプの力が弱まると、血液を送り出す・受け取る流れが滞り、足を中心に水分がたまります。心不全によるむくみには、次のような特徴があります。
- 両足がむくみ、夕方だけでなく朝も引かない
- 体重が急に増える
- 坂道や階段で息が切れる
- 横になると咳が出る、息苦しくて眠れない・横になると苦しい(起坐呼吸)
高血圧や糖尿病のある方、心臓の病気を指摘されたことがある方は、特に注意が必要です。心不全は早く見つけて治療を始めることで、心臓への負担を減らし予後を改善することができる病気です。
特に夜間の呼吸困難症状・起坐呼吸症状がある場合は心不全の可能性が高いと言われています。早めに医療機関を受診しましょう。
腎臓の病気
腎臓は、体の余分な水分と塩分を尿として排出する臓器です。腎臓の働きが落ちると水分が体にたまり、足だけでなく、朝起きたときのまぶたや顔のむくみとして現れることがあります。尿の泡立ちが強くなった、尿の量が減ったと感じるときは、腎臓が関係している可能性があります。健康診断で「尿タンパク」や「クレアチニン」の異常を指摘されたことがある方は、放置せずご相談ください。
肝臓の病気
肝臓では、血管の中に水分を保つ「アルブミン」というたんぱく質が作られています。肝臓の働きが低下してアルブミンが減ると、血管から水分が漏れ出しやすくなり、むくみやお腹の張りにつながります。
甲状腺の病気
のどにある甲状腺のホルモンが不足すると、全身がむくんだようになります。特徴は、指で押してもへこみにくいむくみであること。強い疲れやすさ、寒がり、体重増加、皮膚の乾燥などを伴うことが多く、中高年の女性に比較的よくみられます。血液検査で調べることができます。
糖尿病との関係
糖尿病そのものより、長く続いた高血糖によって腎臓が傷むこと(糖尿病性腎症)が、むくみの原因になります。また、糖尿病の治療薬の一部には、副作用としてむくみが出やすいものもあります。糖尿病を治療中の方で、むくみが出てきた際は主治医に伝えることが大切です。
血栓・静脈の病気
急に片足だけが腫れて痛むときは、足の静脈に血のかたまりができる深部静脈血栓症の可能性があります。放置すると血栓が肺に流れて重症化することがあるため、その日のうちの受診をおすすめします。
更年期・自律神経とむくみ
40代後半から50代の女性では、ホルモンバランスの変化にともない、むくみ・冷え・だるさ・頭痛などの症状が重なって現れることがあります。検査をしても内臓に異常が見つからない場合、こうした体の変化が背景にあるケースも少なくありません。「病気ではない」とわかるだけでも安心につながりますし、漢方薬などで症状をやわらげる選択肢もあります。
薬の副作用
意外と見落とされがちなのが薬の副作用による浮腫です。高血圧で治療を受けられている方は多いですが、高血圧治療によく使用される「カルシウムチャネルブロッカー(アムロジピン®, ニフェジピン®…)」という薬により足のむくみが出る場合もあります。診断に難渋する場合もありますが、重篤な病気を除外し、飲まれているお薬の内容から診断をしていきます。
むくみ以外の症状にも目を向けてみましょう
むくみの原因を考えるうえで、一緒に出ている症状はとても大切な手がかりです。
- むくみ+息切れ・動悸 → 心臓心不全の可能性
- むくみ+尿の泡立ち・量の変化 → 腎機能障害(慢性腎臓病)の可能性
- むくみ+強い疲れやすさ・寒がり → 甲状腺機能低下症の可能性
- むくみ+片足の痛み・赤み → 深部静脈血栓症や皮膚の感染症(蜂窩織炎)の可能性
- むくみ+頭痛・だるさ(検査で異常なし) → 生活習慣や自律神経の影響
「むくみだけ」を見るのではなく、体全体の変化とあわせて考えることで、原因にたどり着きやすくなります。受診の際は、いつから・どこが・どんなときにむくむか、体重の変化、お持ちのご病気や飲んでいる薬がわかるものをお持ちいただくと診断がスムーズです。
何科を受診する?どんな検査をする?
むくみが続くときの受診先は、内科・循環器内科が窓口になります。原因を幅広く調べられるからです。
問診・診察のうえで必要に応じて以下のような検査を行います。
- 血液検査(肝・腎機能、甲状腺機能、心不全マーカー:NT-pro BNP、血栓マーカー:D-dimer)
- 尿検査(タンパク尿の有無など)
- 十二誘導心電図
- 胸部X線(レントゲン)
- 心臓・下肢血管超音波検査(エコー)
上記の検査を行い浮腫の原因を調べます。いずれも体への負担が少ない検査です。

まとめ:こんなむくみはすぐに受診を!
- 数日たっても引かない、悪化していくむくみ
- 体重の急な増加、息切れ、起坐呼吸(横になると苦しいなど)を伴うむくみ
- 顔やまぶたのむくみ、尿の異常を伴うむくみ
- 倦怠感を伴う押してもへこまないむくみ
- 急に片足だけ腫れた・痛みがあるむくみ
むくみは、体の中の変化を知らせてくれる大切なサインです。上記ような浮腫は要注意ですが、その他にも判断に迷う場合は多いと思います。適切な指導・投薬により症状を軽快・改善することができる場合があります。
当院では緊急性がある場合には浮腫・息切れ・胸痛検査は当日可能です。ご心配の方はお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 全身がむくむのですが、重い病気でしょうか? 全身のむくみは、心臓・腎臓・肝臓・甲状腺など全身に影響する原因で起こりやすい一方、塩分のとりすぎや薬の影響のこともあります。長く続く場合は自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
Q. 健康診断では異常がありませんでした。それでも受診すべき? 健康診断の基本項目だけでは、甲状腺や心臓の負担まではわからないことがあります。浮腫が続いてお辛い場合は症状に合わせた検査を受ける必要があります。
Q. むくみで受診するのは大げさではありませんか? そんなことはありません。むくみは内科の外来でよくあるご相談のひとつです。「調べて何もなければ安心」という気持ちで、気軽にお越しください。
この記事の執筆者 わらび内科・循環器内科クリニック 院長 髙橋 剛士 (総合内科専門医・循環器内科専門医)
参考文献
- 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン
- エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
- 甲状腺疾患診断ガイドライン2024












