
夕方になると靴がきつい。靴下の跡がなかなか消えない。足の甲や足首を指で押すと、へこんだまましばらく戻らない――。こうした足のむくみ(浮腫)は、多くの方が一度は経験する身近な症状です。
「疲れているだけ」「年齢のせい」と放置されがちですが、なかには心臓や血管、腎臓などの重大な病気が隠れていることもあります。この記事では、足がむくむ仕組みと原因、そして受診を考えたほうがよいサインについて、内科・循環器内科の視点から解説します。
足がむくむ仕組み
むくみとは、皮膚の下に余分な水分がたまった状態のことです。
私たちの体では、血管の中と外を水分が行き来しています。心臓から送り出された血液は、足の先まで届いたあと、静脈を通って心臓へ戻ります。このとき、ふくらはぎの筋肉がポンプのように働いて、血液を押し上げています。
ところが、長時間立ちっぱなし・座りっぱなしでいると、このポンプが働かず、重力の影響で水分が足にたまってしまいます。足は体のいちばん低い位置にあるため、むくみが最も出やすい場所なのです。足の甲や足首からむくみ始めることが多いのも、重力の影響を最も受ける部位だからです。
病気ではない足のむくみ(一時的なむくみ)
立ち仕事・デスクワークによるむくみ
夕方に強くなり、一晩眠ると翌朝には軽くなっている。このパターンであれば、多くは姿勢によるむくみです。販売や調理などの立ち仕事、長時間のデスクワーク、飛行機や車での長距離移動などで起こりやすくなります。
塩分やお酒のとりすぎ
塩分をとりすぎると、体は塩分の濃度を薄めようとして水分をため込みます。外食やお酒を楽しんだ翌朝に足や顔がむくむのは、このためです。
運動不足・筋力の低下
ふくらはぎの筋肉が少ないと、血液を押し上げる力が弱くなります。運動習慣のない方や、加齢で筋肉量が減った方に足のむくみが起こりやすいのは、このためです。
女性に足のむくみが多い理由
「足のむくみ」で悩まれるのは、圧倒的に女性が多い印象があります。これには、男性に比べて筋肉量が少ないこと、ホルモンバランスの変動が水分の保持に影響すること、立ち仕事やデスクワークの割合など、複数の要因が関係していると考えられています。また、更年期の時期には、ホルモンバランスの変化にともなって、むくみ・冷え・だるさが重なって現れることもあります。
「女性だからむくみやすいのは仕方ない」と思われがちですが、生活の工夫で改善できるむくみも多く、また女性に多い甲状腺の病気が隠れていることもあるため、長引く場合は一度チェックしておくと安心です。
注意が必要な足のむくみ
一方で、次のような特徴があるむくみは、体からのサインかもしれません。
何日も続く・朝になっても引かない
一晩休んでも足のむくみが取れない、日に日にひどくなる場合は、内臓の病気が関わっている可能性があります。特に、むくみとあわせて
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体重が急に増えた
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息が切れやすくなった・呼吸が苦しい
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横になると咳が出る・寝れない
このような症状があるときは、心不全や肝硬変、腎臓病の可能性があり早めの受診をおすすめします。
治療は、利尿薬を中心とした薬物治療が中心となります。
片足だけがむくむ・左右差がある
両足ではなく片足だけ、あるいは左右差がはっきりあるむくみには注意が必要です。足の静脈に血のかたまり(血栓)ができる「深部静脈血栓症」では、片足が急にむくみ、ふくらはぎの痛みや皮膚の赤みを伴うことがあります。血栓が肺に飛ぶと肺血栓塞栓症を発症し、呼吸困難や胸痛といった症状が出ます。命に関わることもあり、急に片足が腫れたときはすぐに医療機関を受診してください。
このほか、足の血管がこぶのように浮き出る下肢静脈瘤や、手術後などにリンパの流れが滞るリンパ浮腫でも、左右差のあるむくみが起こります。
押した跡が戻らない・皮膚が硬い
すねや足の甲を指で5秒ほど押して、へこみが残る場合は、水分が多くたまっているサインです。反対に、むくんで見えるのに押してもへこまない場合は、甲状腺の働きの低下(甲状腺機能低下症)、リンパ浮腫等が関係していることもあります。
痛みを伴うむくみ
むくみと同時に足の痛みがあるときは、注意深く原因を考える必要があります。急な片足の腫れと痛みは前述の血栓のサイン、皮膚が赤く熱をもって痛むときは皮膚の感染症(蜂窩織炎)の可能性があります。「むくんで、しかも痛い」ときは我慢せず受診してください。
自分でできる足のむくみ対策
生活習慣による一時的なむくみであれば、次のような工夫で改善が期待できます。
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こまめに足を動かす:デスクワークや立ち仕事の合間に、1時間に1回はかかとの上げ下げや足首を回す運動を。ふくらはぎのポンプを動かすことが、むくみ対策の基本です。
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弾性ストッキング(着圧ソックス)を活用する:適度な圧で足を締めつけることで、水分がたまるのを防ぎます。立ち仕事の方や長距離移動のときに役立ちます。糖尿病や足の動脈の病気がある方は、使用前に医師にご相談ください。当院でも取り扱っています。
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寝るときに足を少し高くする:クッションなどで足を5〜10cmほど高くして休むと、日中たまった水分が戻りやすくなります。
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塩分を控え、カリウムをとる:麺類のスープを残す、加工食品を減らすだけでも塩分は減らせます。野菜や果物に含まれるカリウムは塩分の排出を促進します。腎機能が悪いと言われている方は注意が必要です。
これらを2週間ほど続けてもむくみが改善しない場合は、医療機関での検査を受けることをおすすめします。
何科を受診すればよい?どんな検査をする?
足のむくみで迷ったら、まずは内科・循環器内科にご相談ください。むくみの原因は心臓・腎臓・甲状腺・血管と多岐にわたるため、横断的に調べられる診療科が窓口として適しています。
当院では、問診と診察に加えて、必要に応じて次のような検査を行います。
- 血液検査:腎臓・肝臓・甲状腺の働きや、心臓の負担の指標を確認します
- 心臓超音波検査(心エコー):心臓のポンプの働きを直接確認できます
- 下肢血管エコー:血栓や静脈の逆流がないかを調べます
- 心電図・レントゲン
- 尿検査:腎機能障害、蛋白尿の有無を調べます
いずれも痛みの少ない侵襲性の少ない検査です。受診の際は、「いつからむくんでいるか」「朝は引くか」「体重の変化」「飲んでいる薬」などをメモしてお持ちいただくと、診断がスムーズになります。
当院では、循環器内科専門医が足のむくみの診療を行っています。「これくらいで受診していいのかな」というむくみでも、原因がはっきりすれば安心につながります。お気軽にご相談ください。
まとめ
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夕方に強くなり翌朝軽くなるむくみは、多くが姿勢や生活習慣によるもの
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女性や高齢の方は筋肉量などの影響でむくみやすいが、病気が隠れていることもある
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何日も続く、体重増加や息切れを伴う、片足だけ腫れる場合は病気のサインの可能性
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急に片足がむくんで痛むときは、血栓の可能性があるため早急に受診を
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迷ったら内科・循環器内科へ。負担の少ない検査で原因を調べることができます
この記事の執筆者 わらび内科・循環器内科クリニック 院長 髙橋 剛士 (総合内科専門医・循環器内科専門医)
参考文献
- 日本循環器学会. 心不全診療ガイドライン
- 日本静脈学会. 下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドライン
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「浮腫(ふしゅ)」















