
「リベルサスGLP-1受容体作動薬を飲み始めたら気持ち悪い」「吐き気はいつまで続くの?」「腎臓や肝臓に悪くないの?」――飲み始める前後の方から、副作用についてのご質問を多くいただきます。
この記事では、国内の添付文書と、医学誌に掲載された臨床試験(原著論文)のデータをもとに、リベルサスの副作用の種類・頻度・続く期間・対処法、そしてすぐに受診すべき症状を、総合内科専門医・循環器内科専門医の立場から解説します。
[この記事でわかること]
- よくある副作用(吐き気・下痢・便秘など)の頻度と、続く期間の目安
- 眠気・うつ・頭痛と薬との関係についてわかっていること
- 腎臓・肝臓の働きが低下している方への影響
- 「死亡」リスクについて大規模試験が示していること
- 使えない人と、すぐに受診すべき症状
結論:多いのは消化器症状で、多くは飲み始め・増量直後の一時的なもの
● 最も多い副作用は吐き気(悪心)と下痢で、添付文書では5%以上と記載されています。
● 消化器症状は飲み始めと増量の直後に起こりやすく、多くは軽度〜中等度で、時間とともに軽くなります。
● 腎機能・肝機能が低下している方でも、薬の血中濃度は大きく変わらず、用量調整は不要とされています。ただし嘔吐・下痢による脱水には注意が必要です。
● 心血管リスクの高い2型糖尿病の方を約4年追跡したSOUL試験では、死亡がプラセボ(偽薬)より増えることはありませんでした。
● 持続する強い腹痛、右上腹部痛・黄疸、水分がとれないほどの嘔吐・下痢は、すぐに受診が必要です。
副作用の一覧と頻度(添付文書より)
よくある副作用
国内の添付文書に記載されている主な副作用と頻度は次のとおりです。嘔気・下痢/便秘・食欲不振といった消化器症状が大部分を占めます。
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頻度 |
主な副作用 |
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5%以上 |
悪心(吐き気)、下痢 |
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1〜5%未満 |
便秘、嘔吐、腹部不快感、腹痛、消化不良、上腹部痛、腹部膨満、胃食道逆流、食欲減退、頭痛、リパーゼ増加など |
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0.5〜1%未満 |
めまい、味覚異常、疲労、無力症、おくび(げっぷ)、胃炎など |
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頻度不明 |
胆石症、胃排出遅延、心拍数増加、過敏症(発疹・じんま疹)など |
※国内添付文書の「その他の副作用」から主なものを抜粋。2型糖尿病の方での臨床試験に基づく頻度です。
重大な副作用
いずれも稀な副作用であり、過度に怯える必要はありませんが、すでに他の糖尿病薬を内服されている方や膵炎の既往のある方、胆石があると言われている方は注意して使用する必要があります。必ず医師に伝えるようにしましょう。
- 低血糖(頻度不明):単独で起こる事は稀ですが、他の糖尿病治療薬・インスリンとの併用で起こりやすくなります。
- 急性膵炎(1%):持続する激しい腹痛・背中の痛み、嘔吐など。
- 胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸(頻度不明):右上腹部の痛み、発熱、皮膚や白目が黄色くなる。
- イレウス(腸閉塞)(頻度不明):強い便秘、お腹の張り、持続する腹痛、嘔吐。
吐き気・下痢・便秘:頻度と続く期間
臨床試験での頻度
- PIONEER 5試験(2型糖尿病で中等度の腎機能低下がある方、14mg):吐き気は実薬群0%、プラセボ群7.5%
- OASIS 4試験(肥満の方、国内未承認の25mg):消化器系の有害事象は実薬群0%、プラセボ群42.2%
- PIONEERプログラム全体:消化器症状による服薬中止は、実薬群で7〜12%、プラセボ群で0.5〜2.0%
日本で処方できる用量(3〜14mg)では、海外の高用量試験より消化器症状の頻度は低めですが、それでも吐き気はよくある副作用と考えておく必要があります。
吐き気はいつまで続く?
PIONEER試験では、消化器症状は飲み始めと増量の時期に多く、その後は減っていくことが報告されています。3mgから始めて4週間ごとに段階的に増やすのは、体を慣らして消化器症状を抑えるためです。
同じGLP-1受容体作動薬の注射薬を使ったSTEP 1〜3試験の統合解析では、吐き気1回あたりの持続期間の中央値は8日、下痢は3日、嘔吐は2日でした。一方、便秘は中央値47日と長引く傾向がありました。飲み薬についての同様の解析はありませんが、「吐き気は数日〜1週間程度で落ち着くことが多く、便秘は長引きやすい」というのが一つの目安です。
吐き気・下痢・便秘をやわらげる工夫
- 「お腹いっぱい」の手前で食事をやめ、ゆっくりよく噛んで食べる
- 脂っこい食事や一度に大量に食べることを避ける
- 下痢・嘔吐があるときは、こまめに水分と塩分をとる
- 便秘には水分と食物繊維をしっかりとり、改善しなければ医師に相談する
- 症状が強いときは自己判断で増量せず、増量の延期や減量を医師と相談する
眠気・だるさ・頭痛について
「リベルサスGLP-1受容体作動薬を飲むと眠くなる」という声がありますが、国内の添付文書には「眠気(傾眠)」の記載はありません。記載があるのは疲労・無力症(0.5〜1%未満)、頭痛(1〜5%未満)です。
眠気やだるさを感じる場合は、次のような原因が考えられます。
- 食事量が大きく減っている:エネルギーや糖質の不足でだるさが出ることがあります。
- 脱水:吐き気で水分が十分にとれていない、下痢が続いている。
- 低血糖:糖尿病の薬(特にスルホニル尿素薬・インスリン)と併用している場合。
極端な食事制限をしないこと、水分をしっかりとることが基本です。強いだるさが続く場合は、自己判断で続けずに医師に相談してください。
うつ・気分の落ち込みとの関係
GLP-1受容体作動薬とうつ・自殺念慮との関係は、海外で一時話題になりました。現時点でわかっていることは次のとおりです。
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●欧州医薬品庁(EMA)の評価(2024年4月):臨床試験・市販後データ・大規模データベース研究を検討した結果、GLP-1受容体作動薬と自殺念慮・自傷行為との因果関係を支持する根拠はないと結論しました。
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●STEP試験の事後解析(JAMA Intern Med 2024):重い精神疾患のない肥満の方3,377人で、注射のGLP-1受容体作動薬は68週時点で中等度以上の抑うつ症状がある人の割合や、自殺念慮・行動の頻度を増やしませんでした。
主に注射薬でのデータであり、精神疾患のある方は多くの試験で除外されています。注射薬の方が効果効能及び副作用も増えるのが一般的ですので内服薬においても副作用の観点で言えば可能性は低いと考えます。ただ、うつ病などの治療中の方は必ず医師に伝え、服用中に気分の落ち込みや不安が強くなった場合は、早めに相談してください。
腎臓・肝臓への影響
腎機能が低下している方
腎機能の程度が異なる71人を対象にした薬物動態試験(Clin Pharmacokinet 2018)では、腎機能が正常な方から透析中の末期腎不全の方まで、薬の血中濃度に一貫した違いはありませんでした。半減期も152〜165時間でほぼ同じでした。つまり、腎機能低下によって用量を変える必要はないと結論されています。むしろ近年では腎臓保護(eGFR低下の抑制・尿蛋白の減少)効果が証明されています。欧州の心不全ガイドラインでも、心保護薬として位置付けられるなど「糖尿病・肥満症治療を越えた薬」としての地位を確立しつつあります。
注意が必要なのは、嘔吐や下痢による脱水から急性腎障害を起こすおそれがある点です。添付文書でも重要な注意として記載されています。もともと腎機能が低下している方や、利尿薬・降圧薬を飲んでいる方は、脱水に特に気をつけてください。
肝機能が低下している方
肝機能の程度が異なる56人を対象にした薬物動態試験(J Clin Pharmacol 2018)では、軽度から重度の肝機能低下がある方でも血中濃度や半減期に明らかな違いはなく、用量調整は不要と結論されています。
なお、臨床検査ではリパーゼやアミラーゼ(膵臓の酵素)の上昇が報告されています。定期的な血液検査で確認しながら使うことが大切です。
「死亡」のリスクについて大規模試験が示していること
リベルサスGLP-1受容体作動薬による死亡についても気になる方は多いと思います。心臓や血管の病気のリスクが高い方を対象にした大規模試験のデータをご紹介します。
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試験 |
対象・人数 |
期間 |
主な結果 |
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PIONEER 6(N Engl J Med 2019) |
心血管リスクの高い2型糖尿病 3,183人 |
中央値15.9か月 |
心血管イベントはプラセボと比べて増えず(ハザード比0.79)。全死亡のハザード比は0.51 |
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SOUL(N Engl J Med 2025) |
心血管疾患・慢性腎臓病のある2型糖尿病 9,650人 |
中央値47.5か月 |
心血管イベントを14%減少(ハザード比0.86)。全死亡はプラセボと有意差なし。重篤な有害事象は47.9%対50.3% |
※PIONEER 6の全死亡は副次的な評価項目で、偶然の可能性を排除できないため参考値です。
もともと太っていない方が、美容目的で過剰な使用をした場合や、急激に用量を増加した場合などは副作用は出やすいです。しかし、適切に使われている限りリベルサスGLP-1受容体作動薬で死亡が増えるというデータはありません。ただしこれは医師の管理下で2型糖尿病の方が使った場合の結果です。急性膵炎や脱水による腎障害など、まれでも重い副作用はあるため異変を感じたら早めに受診することが重要です。
手術・内視鏡検査を受ける予定がある方へ
GLP-1受容体作動薬は胃の動きをゆっくりにするため、全身麻酔や深い鎮静の際に、胃に残った内容物を誤嚥した例が報告されています(添付文書にも記載)。また、胃カメラの際にも前日食べた物が胃内に残りやすくなる事も知られており、早い時間に最終の食事を終えない場合は十分な検査ができない場合もございます。手術や胃カメラ・大腸カメラなどの予定がある場合は、リベルサスGLP-1受容体作動薬を服用していることを必ず担当医に伝えてください。
使えない人・注意が必要な人
上記に当てはまる方は注意が必要です。必ず医師にご確認ください。
すぐに受診が必要な症状
次の症状があれば、服用を中止して速やかに医療機関を受診しましょう。
- 持続する激しい腹痛(背中に抜ける痛み)、嘔吐 → 急性膵炎の可能性
- 右上腹部の痛み、発熱、皮膚や白目が黄色くなる → 胆嚢炎・胆管炎の可能性
- 強い便秘とお腹の張り、繰り返す嘔吐 → 腸閉塞の可能性
- 嘔吐・下痢が続き水分がとれない、尿が少ない → 脱水・急性腎障害の可能性
- 冷や汗、動悸、手のふるえ、意識がぼんやりする → 低血糖の可能性(糖尿病の薬を併用している場合)
- 顔や喉の腫れ、息苦しさ、全身のじんま疹 → 重いアレルギー反応の可能性
よくある質問
まとめ
- 最も多い副作用は吐き気や下痢で、飲み始め・増量直後に起こりやすく、多くは一時的です。
- 眠気は添付文書に記載のない症状で、食事量の減少・脱水・低血糖などが関係している可能性があります。
- うつ・自殺念慮との因果関係は、現時点の評価では支持されていません。
- 腎機能・肝機能低下による用量調整は不要ですが、嘔吐・下痢による脱水には注意が必要です。
- 大規模試験で死亡が増えるデータはありませんが、強い腹痛・背部痛などの症状が出たらすぐに受診してください。
適切に使用すれば、副作用はそれほど恐れる事はありません。使用経験豊富な医師・医療機関でご自身の状態をよく相談し使用するようにしてください。
リベルサスGLP-1受容体作動薬の基本については「リベルサスGLP-1受容体作動薬とは?」、副作用を減らす飲み方は「リベルサスGLP-1受容体作動薬の正しい飲み方」で解説しています。
自由診療(適応外使用)に関する重要事項
● 承認状況:リベルサスGLP-1受容体作動薬は、国内では2型糖尿病の治療薬として承認されています。肥満症・体重減少を目的とした使用は適応外使用であり、自由診療(全額自己負担)となります。
● 入手経路:国内の医薬品卸売販売業者を通じて、国内承認品を仕入れています。
● 国内の承認医薬品:肥満症を効能・効果とする医薬品として、ウゴービGLP-1受容体作動薬(注射薬)、マンジャロGIP/GLP-1受容体作動薬などが国内で承認されています(一定の条件を満たす場合は保険適用)。
● 諸外国における安全性情報:米国等でも2型糖尿病治療薬として承認されており、その後2025年12月に25mg製剤(日本未承認)が肥満症治療薬として承認されています。主な副作用として吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状、重大な副作用として低血糖、急性膵炎、胆嚢関連疾患などが報告されています。
● 医薬品副作用被害救済制度:適応外使用で重篤な副作用が生じた場合、救済制度の対象外となる可能性があります。
● 費用:自由診療の場合は医療機関により価格は異なります。
当院からひとこと
当院では高血圧や心不全・慢性腎臓病の患者さんを多く診療しています。こうした方は利尿薬や降圧薬を使っていることが多く、GLP-1受容体作動薬による吐き気・下痢が続くと、脱水から腎機能が悪化したり、血圧が下がりすぎたりすることがあります。持病がある方は、副作用が出たときにすぐ相談できる医療機関で使うことをおすすめします。当院は、保険診療・保険適応外のダイエット診療まで幅広く行っております。ご相談をご希望の方は下記よりご予約ください。
お電話でのご予約・お問い合わせ:048-229-9777
参考文献
- ノボ ノルディスク ファーマ株式会社. リベルサスGLP-1受容体作動薬錠 添付文書(2026年5月改訂 第6版)・医薬品インタビューフォーム.
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- McGuire DK, et al. N Engl J Med. 2025. doi:10.1056/NEJMoa2501006
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監修:髙橋 剛士 |
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。薬の使用や治療方針については、必ず医師にご相談下さい。














