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長引く咳 今年は特に多い?
風邪の後に咳が長引くことは珍しくありません。しかし咳が2週間以上続く場合、その背後に複数の疾患が隠れている可能性があります。長引く咳にはさまざまな原因があり、主な原因とその治療法について解説します。
1. 長引く咳の主な原因
1-1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
新型コロナ感染後に咳が続くことは多く、「ロングCOVID(コロナ後遺症)」として報告されています。軽症だった場合でも、気道や肺に炎症が残り、長期間にわたり咳が続くケースがみられます。
- 症状: 乾いた咳、息苦しさ、倦怠感
- 治療: 吸入薬(気管支拡張薬・ステロイド薬)、咳止め、休養と栄養管理
1-2. マイコプラズマ肺炎
ニュースなどでも取り上げられていますが、今年は特にマイコプラズマ肺炎が流行しています。発熱や倦怠感とともに、咳がしつこく続くのが特徴です。肺炎が重度になりSpO2低下を認めると酸素吸入が必要となり入院加療を要する場合もあります。レントゲン検査、抗原検査等で診断を行いますが偽陽性・偽陰性を認める場合があります。家族内や周囲での感染エピソードも重要です。
- 症状: 空咳が長引く、軽い発熱
- 治療: マクロライド系抗生物質(例: アジスロマイシン、クラリスロマイシン)
※マクロライド系抗菌薬への耐性増加が問題となっており、3日間治療を行うも解熱しない場合には耐性菌と考えミノマイシンやニューキノロン系抗菌薬を用いて治療を行います。
1-3. 咳喘息・気管支喘息
喘鳴(気管支の狭窄)がないにもかかわらず、長期間の咳が続くのが「咳喘息」です。風邪や気候の変化がきっかけで悪化することが多く、放置すると本格的な喘息に進行する可能性があります。気管支が狭窄を起こし喘鳴(ヒューヒューする音)を認める場合を「気管支喘息」と呼びます。どちらも吸入薬を中心に治療を行います。
- 症状: 夜間や早朝の咳、運動時に悪化
- 治療: 吸入ステロイド・気管支拡張薬
1-4. 感染後咳嗽
風邪やウイルス感染後、気道の粘膜が過敏になり、咳が続くことがあります。この状態は自然に治癒する場合が多いものの、長い場合数週間から数ヶ月続くこともあります。
- 症状: 乾いた咳
- 治療: 咳止め、抗ヒスタミン薬、吸入薬、漢方薬(麦門冬湯など)
1-5. アトピー咳嗽
アレルギーが原因で、気道が過敏になり咳が続く状態です。喘息とは異なり、気管支の狭窄は起きませんが、アレルゲンの除去が治療に重要です。季節の変わり目に症状が出やすいです。抗ヒスタミン薬などのアレルギー薬が有効である場合が多いです。
- 症状: 乾いた咳、喉のいがいが感、アレルギー性鼻炎との併発
- 治療: 抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬
1-6. 逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流し、食道粘膜を刺激することで咳が引き起こされます。特に食後や横になった時や就寝前に症状が悪化することが特徴です。声が枯れたり、喉がいがらっぽくなったり違和感症状を感じることもあります。
- 症状: 胸やけ、酸っぱい液体の逆流、咳
- 治療: プロトンポンプ阻害薬(PPI)、食生活の改善
1-7. ACE阻害薬の内服(降圧剤)
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)という種類の降圧剤に乾いた咳の副作用があることがわかっています。
例. エナラプリル®・イミダプリル®・・・
心疾患の既往がある方に特に有効である薬ですが、疑われる場合には内服変更が必要な場合もあります。
2. 受診の目安
以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
- 2週間以上続く咳
- 呼吸困難や胸の痛み
- 痰に血が混じる
- 高熱や倦怠感が続く
- 体重が減少する
3. 生活習慣の改善・日常生活でできること
- 部屋の湿度を保つ: 特に冬場の乾燥時期は加湿器を使い50〜60%の湿度を維持する
- 水分をこまめに取る: 喉の乾燥を防ぐ
- 食生活の見直し: 胃酸逆流を防ぐため、食後すぐ横になることを避ける(逆流性食道炎の場合)
- マスクの使用: ウイルス感染やアレルゲンから気道を守る 加湿効果もある
- 禁煙を徹底し、タバコの煙による気道刺激を避ける
- アレルゲンの特定と回避(アトピー咳嗽の場合)
4. まとめ
長引く咳には、新型コロナウイルスやマイコプラズマ肺炎など、さまざまな原因が考えられます。咳が2週間以上続く場合は、自己判断で放置せず、医療機関で適切な診断を受けることが重要です。