血圧の目標値
冬になると血圧が上昇してくることが多々あります。
血圧が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞、心不全などの重大疾患を発症するリスクが上がるため血圧を下げる治療を行います。
しかし、血圧の降圧目標は年齢や基礎疾患によって異なります。
1.糖尿病が無い方(SPRINT試験)
2015年のSPRINT試験という大規模臨床研究において、糖尿病のない方の収縮期血圧(上の血圧)を
・140mmHg未満に管理した群 vs. 120mmHg未満に厳格に管理した群
とでそれぞれの群での脳梗塞・心血管疾患・心不全発症率を比較しました。
結果は血圧を120mmHg未満に厳格に管理した群で約27%心血管イベント発生を減らしたという結果となりました。
2.糖尿病がある方の場合(BPROAD試験)
次は糖尿病を有する方の場合です。
糖尿病の方は特に血圧が上がるにつれて心血管疾患の発症率が血圧と比例して上昇することがわかっています。
今まで糖尿病を有する方の血圧を下げる有用性は指摘されていたものの、はっきりとした科学的な証明がされておりませんでした。
今年の11月に報告されたBP ROAD試験の結果によると、糖尿病患者においてはより積極的な血圧管理が推奨されています。この試験では、糖尿病を持つ患者で収縮期血圧を
・140mmHg未満に管理した群 vs. 120mmHg未満に厳格に管理した群
とでを比較し、
収縮期血圧120 mmHg未満の群で心筋梗塞、脳卒中、心不全の入院治療、または心血管死のリスクが21%低下することが確認されています。
しかし、積極的な血圧管理にはSPRINT試験同様、副作用を伴いました。BP ROAD試験では、積極的治療を受けたグループで低血圧や高カリウム血症の副作用がより頻繁に観察されましたが、これらは重篤なものではなく、心血管疾患発症予防の有益性が上回る、と結論されています。
3.日本のガイドライン
収縮期血圧を120mmHg未満に管理した群では低血圧や腎機能増悪といった副作用発生を増加させる可能性も指摘されたため、
現在日本の高血圧ガイドラインでは
・血圧130/80mmHg未満の管理、また75歳以上の方に関しては140/90mmHg未満での管理を推奨しています。
上記より、適切なモニタリング下で血圧:120/80mmHg未満に管理をすることで脳卒中・心血管疾患の発症を有意に予防できると言えます。
ただ、副作用リスク増大もあり少なくとも現行ガイドラインの130/80mmHg未満は最低でも達成しましょう。
高血圧治療のみでなく、心不全治療にも大きな役割を果たす薬剤も登場しています。また、あくまで上記は目安であり個々人によって目標値が異なる場合もございます。
元々心臓疾患がある方・無い方含めご不明な方は一度ご相談ください。