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「お腹まわりが気になる」「体重は変わらなくてもウエストだけ増えてきた」
そんな声を多く耳にします。最近、健康管理の指標として注目されているのが
WHtR(Waist-to-Height Ratio:ウエスト・身長比)=腹囲÷身長です。
この数字が0.5を超えると、動脈硬化や生活習慣病のリスクが一気に高まると言われています。
本記事では、
- なぜ「5」が危険ラインなのか
- 動脈硬化との深い関係
- 放置するとどうなるのか
- 内科でできる検査・治療
- ダイエット治療(GLP-1受容体作動薬、食事、運動など)の選択肢
について、専門用語を使わず、わかりやすくお伝えします。
WHtR(腹囲÷身長)はBMIより有用と示すエビデンス
WHtRが注目されたきっかけのひとつが、2012年のメタ解析(30万人以上対象) です。
この報告では、
- WHtRはBMIよりも心血管疾患リスクを正確に予測
- 0.5を超えると心血管病・糖尿病の発症が有意に増加
と示され、“0.5ルール”が推奨されるようになりました。
さらに2014年の国際共同研究でも
「WHtRは年齢・性別・人種問わず、統一的に使える簡便で強力な指標」
と強調されています。
なぜ「0.5」が危険なのか?
近年の報告では WHtR 0.5を境に、以下のリスクが急増します。
■ 動脈硬化性疾患
韓国の大規模研究(Park et al. 2020, Nutrients)では、
WHtRが上がるほど頸動脈プラークが増えることが示されました。

■ 糖尿病発症
中国の前向き研究(Song et al. 2018)では、WHtR ≥0.5 群は糖尿病発症リスクが 約2倍 に上昇。

■ 心血管病リスク
英国のプライマリケア研究(Browning et al. 2010)では、心筋梗塞・脳卒中の発症と最も強く相関したのはWHtR
と報告されています。
上記はいずれも一部の例ですが、体重が重い・肥満の方は将来的に動脈硬化疾患のリスクが高いことが証明されています。
WHtRが高い=内臓脂肪が多い、ということです。
内臓脂肪は、脂肪細胞から 炎症物質 を放出し、
血管の内側を傷つけていきます。
WHtR 0.5以上の人に見られやすいサイン
- 健診で腹囲・脂質の異常
- 食後の眠気(肥満, 睡眠時無呼吸症候群)
- 階段での息切れ
- 最近疲れやすい
- 動悸や胸の圧迫感
- 肝機能の悪化(脂肪肝)
これらは内臓脂肪の増加に関連し、文献でも報告されています(Marchesini et al. 2003)。上記の指摘を放置している方はご相談ください。
放置するとどうなる?
■ 心筋梗塞・脳梗塞
WHtRが0.5を超えると、心血管イベントが増えることが複数のコホート研究で示されています(Browning et al. 2010)。
■ 糖尿病・高血圧の進行
WHtR高値は糖尿病の予測能が最も高い指標の1つ(Song et al., 2018)。
■ 寿命の短縮
WHtRが高い人は全死亡リスクが有意に上昇(Ashwell 2014)。

健診異常・腹囲増加にて検査で病気が見つかるケースは当院でも多く見られます。
当院(内科・循環器内科)でできる検査
- 血液検査(糖・脂質・肝機能)
- 心電図
- 心臓超音波(エコー)
- 頸動脈エコー(動脈硬化の進行評価)
- 脂肪肝の評価
これらは日本循環器学会ガイドライン(JCS 2022–2024)でも生活習慣病・動脈硬化評価に推奨されている検査です。
効果的な内臓脂肪の減らし方
① 食事療法(極端な制限は不要)
地中海食・高タンパク食はWHtR改善効果を示す研究あり(Estruch et al., 2018)。

②軽い運動を継続
早歩き・階段昇降で内臓脂肪は十分減らせます。実際、1日15分の早歩きで内臓脂肪が減ったという報告もあります。
NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis:非運動性熱産生)と言って運動以外でのカロリー消費も重要です。1駅分余分に歩いたり、家事をしながらながら運動をしたりすることも重要です。
基礎代謝の向上にはレジスタンストレーニングも重要です。1日50回スクワット・30秒プランク×2セットを毎日行うだけでも効果的です。

③GLP-1受容体作動薬
SURMOUNT-1(2022)では、内臓脂肪が大幅に減少し、WHtRも改善を認めます。
※クリニックで用いる場合は、糖尿病がない場合は保険適応外使用となります。

④ SGLT2阻害薬
DAPA-HF / EMPA-REG などの大規模研究で、体重・血圧・心血管死リスクの改善が確認。
※クリニックで用いる場合は、糖尿病・心不全・慢性腎臓病がない場合は保険適応外使用となります。

⑤ 点滴治療・サプリ
αリポ酸+L-カルニチンは脂肪代謝改善の文献報告あり(Koh et al, 2012)。
※当院ダイエット外来でも行っております。
“WHtR:0.5を超えたら健診レベルではなく医療介入レベル”
国際的な推奨では
- WHtR 0.5=生活習慣病リスクの黄色信号
- WHtR 0.6=心血管病の赤信号
とされます。なんとなく肥満は体に悪いイメージはあったと思いますが、すでにこれらは科学的に生命予後を悪くすることが証明されています。
血管ダメージは気づかないうちに進むため、早期受診が予防につながります。
当院では、心疾患・循環器疾患の専門的な管理から高血圧・脂質異常症・糖尿病の治療、また未病段階での食事生活指導やダイエット外来まで幅広く行っております。
ご希望の方はお気軽にご相談ください。
参考文献
- Ashwell M, Gunn P, Gibson S. Waist-to-height ratio is a better screening tool than waist circumference and BMI… Obes Rev. 2012.
- Ashwell M, Gibson S. A proposal for a primary screening tool: WHtR. Nutrients. 2014.
- Park YS et al. Waist-to-height ratio and carotid atherosclerosis. Nutrients. 2020.
- Song X et al. WHtR and diabetes risk. Diabetes Res Clin Pract. 2018.
- Browning LM et al. WHtR as a predictor of cardiometabolic risk. Nutrition Research Reviews. 2010.
- Kahn SE. The relative roles of insulin resistance. Diabetes. 2006.
- Marchesini G et al. Fatty liver and metabolic syndrome. Diabetes Care. 2003.
- Estruch R et al. Mediterranean diet and cardiovascular risk. NEJM. 2018.
- Koh Y et al. L-carnitine and visceral fat. Ann Nutr Metab. 2012.
- DAPA-HF Trial. SGLT2 inhibitors and HF outcomes.
- EMPA-REG OUTCOME. SGLT2 inhibitors and cardiovascular mortality.






