今日は肥満と心不全の関係性についてお話しします。
肥満が心臓に与える影響
・体が大きい=流れる血液量(循環血漿量)の増加
・高血圧・睡眠時無呼吸などによる心筋の柔軟性の低下
・糖尿病、脂質異常症等の合併による心血管疾患(心筋梗塞・狭心症)
・サイトカイン・ホルモン分泌による心筋の線維化進行
上記のような理由により、心不全発症率が肥満のない方と比べ約2倍程度高いことが知られています。
特に、メタボリックシンドロームを合併している肥満の方はさらに心不全合併のリスクが高いです。
このような肥満患者に対して、減量手術(胃バイパス手術)を施行し体重が減った方々は心不全発症リスクが有意に低下するという研究が2021年に報告されています。
いかに日々の健診や減量、生活習慣を規則正しく維持することがいかに重要であるかがわかります。
しかし、肥満がある方全員に減量手術を行うことは全く現実的ではありません。
近年では優れた減量効果を持つGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ®)という糖尿病治療の新薬の登場にて同様の効果を得ることが可能です。
SUMMIT trial
2024年11月に報告されたばかりの最新の大規模研究です。
心不全患者にチルゼパチド(マンジャロ®)を投与すると、投与していない群と比べて心血管の病気で亡くなる方や、心不全の増悪による入院を有意に減少させることがわかりました。
以前の他の研究でもマンジャロ®は半年で概ね15%〜体重減少させる効果を認めています。
体重減少効果による循環血液量の低下や体重減少による運動耐用能の改善、また抗炎症作用があること等が組み合わさり心不全発症リスクの低下に寄与していると考えられます。
糖尿病の薬が心不全に有効
現在は糖尿病の新薬としてSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン)という内服薬が、心疾患既往のある方の生命予後を改善させる薬剤としてフォーカスされています。
しかしこれらの薬剤は体重減少効果はあるもののあくまで初期の利尿効果による一時的な体重減少効果が主であり、高度肥満を改善させるほどのパワーがありませんでした。
日本人は欧米人と比較し肥満の割合は少ないと言われていますが、その中でも肥満を有する方への新たな治療選択として今後マンジャロ®が推奨されるようになるでしょう。
また、このマンジャロ®も今後ゼップハウンド®と名称を変えて肥満症に対し適応を取得する予定です。(高血圧を合併など一部制限があります)
肥満症は様々な疾患のリスクとなっており、これらを未病段階のうちに治療することが健康面でも医療経済的にも重要と思われます。
なかなか減量できない方、当院は内科・循環器内科外来の他にもダイエット外来も行っています。お声がけください。