
目次
はじめに
2025年7月、日本高血圧学会が最新の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発表しました。
今回の改訂は、これまで以上に「生活全体で血圧を管理する」ことを重視しています。
この記事では、改訂の背景や主な変更点、日常生活で活かせるポイントを最新の情報をもとに解説します。
1. ガイドライン名称の変更
旧名称(〜2024年) |
新名称(2025年〜) |
高血圧治療ガイドライン |
高血圧管理・治療ガイドライン |
解説
- 「管理」という言葉が加わり、薬で血圧を下げるだけでなく、日常生活での血圧測定や生活習慣の改善が治療の柱になりました。
- 病院での治療と、家庭での自己管理を両立させることが重要です。
2. 高血圧の診断基準
測定場所 |
高血圧と診断される値 |
診察室 |
140/90 mmHg以上 |
家庭(自宅) |
135/85 mmHg以上 |
解説
- 血圧の基準は変わりませんが、診断には複数回の測定と記録が必要です。
- 一時的な緊張や疲れで上がった血圧ではなく、日常の平均値を把握するために家庭血圧が重視されます。
3. 目標血圧の統一化(大きな改訂ポイント)
測定場所 |
旧目標(75歳未満) |
旧目標(75歳以上) |
新目標(全年齢共通) |
診察室 |
130/80mmHg未満 |
140/90mmHg未満 |
130/80mmHg未満 |
家庭 |
125/75mmHg未満 |
135/85mmHg未満 |
125/75mmHg未満 |
解説
- これまで年齢や病気によって異なっていた目標が、全年齢で同じ数値に統一されました。
- 高齢者でも125/75mmHg未満を目指すことで、脳卒中・心臓病の予防効果が高まることが研究で示されています。
4. 家庭血圧の重要性がさらにアップ
家庭血圧は診察室よりも日常の状態を正確に反映します。
特に朝の血圧(起床後1時間以内)は、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクに深く関係することがわかっています。
家庭血圧の測り方(推奨手順)
- 朝:起床後1時間以内、朝食前、排尿後に測定
- 夜:就寝前に測定
- 1回2測定し、平均値を記録
- 1〜2週間分の記録を医師に提示
5. 薬物治療の進め方(シンプル化)
ステップ |
内容 |
1 |
まず1種類の薬から開始(カルシウム拮抗薬、ARB、利尿薬など) |
2 |
効果が不十分なら2剤併用 |
3 |
必要に応じて3剤以上や特殊な薬(ARNI、追加利尿薬など) |
解説
- 糖尿病や腎臓病を合併している場合は早期から複数の薬を併用します。
- 目標血圧達成までの期間を短くし、合併症のリスクを下げる方針となりました。
6. 生活習慣改善の具体策
項目 |
推奨内容 |
塩分 |
1日6g未満 |
野菜・果物 |
カリウムを多く含む食品を増やす |
尿Na/K比 |
尿検査で塩分とカリウムのバランスを確認 |
運動 |
有酸素運動を週150分 |
体重 |
BMI 25未満 |
飲酒 |
日本酒1合/ビール中瓶1本まで |
解説
- 減塩だけでなく、カリウムを増やしてナトリウムとのバランスを取ることが重要です。
- 運動や体重管理は、血圧を下げるだけでなく糖尿病や脂質異常症の予防にも役立ちます。
7. 改訂の意義
- 年齢に関係なく同じ目標を目指すことで治療方針が分かりやすくなった
- 家庭血圧測定と生活習慣改善が、これまで以上に治療の中心となった
- 「薬だけに頼らず、生活全体で血圧を守る」考え方が明確になった
まとめ
新しいガイドラインでは、「高血圧の数字を抑える」から「生活で血圧を整える」へ、治療の考え方が広がりました。
- 血圧の基準は変わらないが、目標血圧は年齢・基礎疾患を問わず「家庭血圧:125/75mmHg以下」に統一
- ご自宅での測定が治療の第一歩に
- 薬の使い方はシンプルかつ柔軟に
- 目標血圧達成までの期間を従来より短く
- 減塩だけでなく、尿の中のバランスも改善の目安に
上記に基づき、当院では
- 家庭血圧測定の指導
- 食事・運動・睡眠・ストレス管理のアドバイス
- 個別に合わせた薬物治療
- 合併症予防のための定期検査
- 管理栄養士による食事内容・塩分摂取量の指導
を行っています。
血圧が高めの方、ご心配な方はお早めにご相談ください。