冬になると「お風呂で倒れた」というニュースを耳にすることがあります。

その原因のひとつが 『ヒートショック』 です。

ヒートショックとは、急な温度差によって体に大きな負担がかかる現象のこと。

とくに心臓や血管に強いストレスがかかるため、胸の痛みや動悸・めまいなどを引き起こすことがあります。

入浴関連で亡くなる方は諸説ありますが、毎年概ね1万7千人〜2万人程度と報告されており、そのうち高齢者の入浴関連の死亡者数は5千人程度と言われております。高齢の方だけでなく、働き盛りの年代でも起こり得ます。

今回はヒートショックの仕組み、起こりやすい場面、予防法をわかりやすくまとめました。

また、胸痛・動悸があるときに受診すべき理由についても解説します。

1. ヒートショックはなぜ起こる？

ヒートショックは、急な寒暖差に体がついていけないことで起こります。

例えば…

• 暖かいリビングから寒い脱衣所へ行く

• 冷えた体で熱い湯船に入る

• 夜中に冷えたトイレに行く

このような場面で、体温を保つために血管が急に縮んだり広がったりします。

その変化により、心臓に一気に負担がかかり、次のような症状が出ることがあります。

• 胸が苦しい・痛む

• 脈が速い、ドキドキする（動悸）

• めまい

• 立ちくらみ

• 意識が遠のく

とくにお風呂はヒートショックが起こりやすく、毎年多くの事故が報告されています。

2. ヒートショックが起こりやすい人の特徴

以下のような方は、温度差の影響を受けやすく、ヒートショックが起こりやすいとされています。

• 心疾患・動脈硬化性疾患の既往がある方

• 血圧が高い方

• コレステロールが高い方

• 血糖が高い方・糖尿病の方

• 肥満の方

• たばこを吸う方

• 運動不足の方

• 睡眠不足が続いている方

• 御高齢の方

さらに…

「胸が痛くなったことがある」「脈が乱れやすい」「動悸が続いている」方も注意が必要です。

ヒートショックをきっかけに、もともとの心臓のトラブルが表面化することがあるためです。

3. 犬の散歩や買い物でもヒートショックは起こる？

冬は外気温が低く、屋内外の温度差が大きいため、日常のちょっとした行動でもヒートショックが起こりやすくなります。入浴以外でも、下記のような場合は注意が必要です。

• 温かい室内 → 寒い外へ出た瞬間

• 車の暖房 → 外の寒気に触れたとき

• 朝布団から出たとき

「ただ寒いだけ」と気にしない方が多いですが、胸がドキッとしたり脈が乱れる感覚がある場合は要注意です。

4. ヒートショックが引き起こす危険な症状

ヒートショックは、ただの“立ちくらみ”で終わらないことがあります。

① 胸の痛み（胸痛）

心臓に急な負担がかかったサインです。

「押される感じ」「締めつけられる感じ」が特徴です。

② 動悸・脈が乱れる

脈が急に速くなる、飛ぶような感覚があれば注意が必要です。

③ ふらつき・めまい

血管の変化で脳に十分な血が届かなくなると起こります。

④ 失神（気を失う）

入浴時に最も多い危険な症状で、転倒・溺水のリスクが高まります。最悪の場合心停止を引き起こすような不整脈が出現する場合もあります。

5. 冬の入浴で特に注意すべきポイント

お風呂はヒートショックが最も起こりやすい場所。

次のチェックポイントに当てはまる方は、事故のリスクが高まります。

✔ 浴室や脱衣所が寒い

事前にヒーターや暖房器具で温めておくことが大切です。

✔ お湯の温度が41℃以上

熱いお湯は心臓への負担を一気に増やします。なるべく38〜40℃くらいの少しぬるめのお湯に浸かるようにしましょう。

✔ 長風呂

のぼせによる意識障害の危険が高まります。血管が過剰に拡張する場合もあり注意が必要です。

✔ お酒を飲んだ後の入浴

血圧が変動しやすく、事故の報告が多い時間帯です。飲酒後の入浴は控えるようにしましょう。

6. ヒートショックを防ぐための具体的な対策

今日からできる簡単な予防法をご紹介します。

① 脱衣所・浴室をあたためる

小型ヒーターなどで事前に温めましょう。

② お湯の温度は38〜40℃に

ぬるめのお湯のほうが体への負担が少なく、安全です。

③ 浴槽から急に立ち上がらない

ゆっくり動くことでふらつきを防げます。

④ こまめに水分を取る

寒い季節でも脱水が起こりやすく、心臓に負担がかかります。

⑤ 体調が優れない日は無理に入浴しない

めまい・動悸がある日はシャワーで済ませても構いません。

7. 胸痛・動悸がある方はヒートショックの影響を強く受けることがあります

ヒートショックは“寒暖差のストレス”ですが、胸痛や動悸がある場合、このストレスが心臓に直接影響する可能性があります。

例えば…

• ・お風呂に入った瞬間に胸が苦しくなる

• ・温かい部屋から寒い外に出ると脈が乱れる

• ・冬になると動悸が増える

こうした症状は、ヒートショックだけでなく、

心臓や血管の病気のサインであることも少なくありません。

動脈硬化の検査をしておくことで、安心して冬を過ごすことができます。

8. 当院では胸痛・動悸の精密検査が可能です

当院では、ヒートショックに関連した症状や、冬に増える胸の違和感・動悸について、

専門の医師が丁寧に評価しています。

✔ 胸の痛みが続く

✔ 動悸や息苦しさが増えてきた

✔ お風呂でドキッとする感覚がある

✔ 冬になると体調が悪くなる

こうした症状は、早めのチェックが何より大切です。

当院では、

• ✔️心臓の動きをみる検査＝心臓超音波検査
• ✔️血管の状態を確認する検査＝頸動脈超音波
• ✔️脈の乱れを調べる検査＝心電図検査・ホルター心電図検査（24時間・1週間）
• ✔️血液検査によるリスク評価
• ✔️内視鏡検査（心疾患の可能性が限りなく低い場合）

が可能です。

9. まとめ：冬は“温度差”が最大の敵。胸痛・動悸がある方は早めの受診を

ヒートショックは、寒い季節に誰でも起こりうる危険な現象です。

• 急な温度差が体を強く刺激する

• 胸痛・動悸・めまいなどの症状が出る

• お風呂、トイレ、屋外への移動は要注意

• 予防は「温度をそろえる」「ゆっくり動く」

そして…

胸痛・動悸がある方は、ヒートショックによって症状が悪化しやすいため、

症状が気になる方・ご心配な方は一度チェックしておくと安心です。

気になる症状があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。