こんにちは。わらび内科・循環器内科クリニックです。
本日は睡眠時無呼吸症候群と心臓・血管の病気(循環器疾患)についてのお話です。
【要点】
✔️眠気・取れない疲れ・集中できない・夜間頻尿等は睡眠時無呼吸症候群の可能性あり
✔️太り気味の方でいびき・日中の眠気症状・だるさ症状があり血圧が高めの方は要注意
✔️閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は不整脈・心不全・大動脈瘤等の様々な循環器疾患のリスクになる
✔️降圧剤(血圧を下げる薬)が3種類以上必要な方は睡眠時無呼吸症候群合併の可能性がある
肥満等により空気の通り道である上気道(鼻~喉)が睡眠時の筋肉の弛緩により狭窄してしまう状態を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とよびます。いびきや日中の眠気症状・だるさといった症状が典型的な症状です。
OSAは高血圧・不整脈・心不全や大動脈解離・大動脈瘤等との関連が示唆されており、
高血圧患者さんの約3-5割、また治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧剤を内服)患者さんの約8割に閉塞性睡眠時無呼吸症候群が合併しているという文献報告※1, 2, 3もあります。
また、重度の睡眠時無呼吸症候群では死亡リスクを上昇させることもわかっています。
OSAでは夜間就寝中に無呼吸状態となりますが、特にこの回数が多い重度の状態だと体に強いストレスがかかり本来であれば就寝中に低下するはずの血圧・脈拍がむしろ高値となります。無呼吸が解除されしばらくするとまた血圧は元に戻ろうとします。
睡眠時間は1日の約1/4~1/3を占めますので、その間心臓や血管に強い負荷がかかるため気が付かない内に動脈硬化を進行させてしまいます。
これらの影響で血管自体が通常よりも太くなりやすく(=破裂のリスクが高くなる)大動脈瘤・大動脈解離の発生率が増加すること※4、高血圧による高血圧性心疾患・心不全の発症、心房細動という不整脈発症リスクの上昇にもつながります。
その他にも上記の図の通り心臓・血管の病気をお持ちの方には睡眠時無呼吸症候群が隠れている割合がこれほど高いことがわかります。
また睡眠時無呼吸症候群で日中の眠気・だるさが出ることがあるとお話ししましたが、他にも
・朝起きると口が乾燥する
・なかなか血圧がさがらない
・起床時から頭痛
・夜間頻尿である
といった症状は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
年齢(加齢)の影響や忙しさのせいにしがちですが、車の運転等での思わぬ重大事故につながることもありますので早期診断・治療が重要です。
あてはまる方は自宅で検査を行い、治療適応と判断されればCPAPという睡眠時にマスクをつける治療を行います。 困ったことがあればご相談下さい。
【参考文献】
※1 Smith, R. et al. Chest, 121:164-172, 2002
※2 Silverberg DS et al. Am J Hypertens 1997; 10: 1319-1325
※3 Logan AG et al. J Hypertens 2001;19:2271-2277
※4 McNamara SG et al:lung biology in health and disease, 1994; 493-528