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「一番痩せる薬の効果はどのくらいなの?」
「結局体重が一番減るのは?」
「安全なの?」
そんな疑問に答える形で、2025年に発表されたSURMOUNT-5試験が世界的に大きな注目を集めています。
この試験は、2つの医学的ダイエット薬、
- ✔️セマグルチド(商品名:ウゴービ®)
- ✔️チルゼパチド(商品名:マンジャロ®・ゼップバウンド®
を直接比較した初の大規模臨床試験です。
(※マンジャロとゼップバウンドは、適応はそれぞれ糖尿病と肥満症と異なりますが同一の薬剤です。)
本記事では、SURMOUNT-5試験の結果と、両薬剤のダイエット効果をわかりやすく解説します。
🔬 SURMOUNT-5試験とは?
SURMOUNT-5は、肥満や過体重の成人を対象に、チルゼパチドとセマグルチドを直接比較した臨床試験です。
試験は2025年5月、NEJM(New England Journal of Medicine)誌という世界で最も権威のある医学雑誌に掲載されました。
📌 試験概要
項目 |
内容 |
試験名 |
SURMOUNT-5 |
対象者 |
肥満(BMI ≥30)または過体重(BMI ≥27かつ高血圧等の合併あり) ※糖尿病はなし |
比較薬剤 |
チルゼパチド(15mg/週) vs セマグルチド(2.4mg/週) |
試験期間 |
72週間(約1年半) |
主要評価項目 |
体重減少率・ウエスト周囲径の変化・副作用 |
試験デザイン |
無作為化・オープンラベル・並行群間比較 |
📊 試験結果まとめ
比較項目 |
チルゼパチド (マンジャロ®/ゼップバウンド®) |
セマグルチド(ウゴービ®) |
分類 |
GIP/GLP-1作動薬 |
GLP-1作動薬 |
投与頻度 |
週1回皮下注射 |
週1回皮下注射 |
最大用量 |
15mg/週 |
2.4mg/週 |
平均体重減少率 |
20.2% |
13.7% |
15%以上の減量達成率 |
約69.3% |
約47.5% |
20%以上の減量達成率 |
約41% |
約17% |
ウエスト周囲径の減少 |
平均18.4cm |
平均13.0cm |
✅ チルゼパチドの方が有意に高い体重減少効果を示しました。
✅ ウエスト周囲径の減少効果においてもチルゼパチドが上回る結果
🔍 副作用の発生頻度と全体傾向
比較項目 |
チルゼパチド (マンジャロ®/ゼップバウンド®) |
セマグルチド(ウゴービ®) |
総副作用発生率 |
約86% |
約81% |
消化器系副作用(全体) |
約65% |
約58% |
治療中止に至った副作用 |
10.1% |
8.6% |
重篤な副作用(SAE) |
6.6% |
5.0% |
✅ 副作用全体としては、チルゼパチドの方がやや頻度が高く、離脱率も上回る
✅ 多くは軽度〜中等度の症状
💡 共通して多い副作用(軽度〜中等度)
両薬剤に共通して見られる副作用の中心は、消化器症状です。
症状 |
チルゼパチド (マンジャロ®/ゼップバウンド®) |
セマグルチド(ウゴービ®) |
備考 |
吐き気 |
約37% |
約33% |
初期投与時に多く、継続で軽減する傾向 |
下痢 |
約24% |
約21% |
水様便、腹部不快感を伴うことも |
便秘 |
約17% |
約13% |
胃腸の動きが遅くなることが原因 |
嘔吐 |
約17% |
約16% |
少量・短期間が大半 |
食欲低下 |
約17% |
約15% |
作用機序による効果の 一部と捉えることも可能 |
✅ 消化器症状は漸増投与(少量から始めて増量)で軽減できる
✅ 多くは投与開始から2〜4週で落ち着くため、医師の指導が重要
⚠️ 重篤な副作用(SAE:Serious Adverse Events)
SURMOUNT-5試験における重篤な副作用の主な内容と発生率は以下のとおりです。
重篤副作用の種類 |
チルゼパチド (マンジャロ®/ゼップバウンド®) |
セマグルチド(ウゴービ®) |
解説 |
脱水・代謝異常 |
1.0〜1.5% |
〜1.0% |
強い嘔吐・下痢に伴う 電解質異常や腎機能低下 |
胆嚢関連疾患 |
0.6〜1.0% |
0.4〜0.8% |
急激な体重減少とGLP-1作用により胆石リスク増加 |
急性膵炎・膵酵素上昇 |
0.3〜0.5% |
0.2〜0.4% |
稀だが、腹痛や膵酵素上昇があれば中止 |
重度の低血圧症状 |
~0.5% |
~0.5% |
急激な体重減少や食事摂取量低下に伴うもの |
心血管イベント |
ごくまれ(<0.2%) |
ごくまれ(<0.2%) |
明確な因果関係は 確認されていない |
⚠️ 死亡例は報告されていません(SURMOUNT-5試験内)
⚠️ 両剤とも甲状腺髄様癌または膵炎の既往がある場合は慎重投与または禁忌
✅ 安全性の考察
- チルゼパチドは、より強力な体重減少効果があるが消化器症状がやや多い
- 死亡例は1例もない
- 少数だが重篤な合併症発現もあるため定期的な医師の診察が必要
🧠 両薬剤の作用機序の違い
-
✔️セマグルチド(ウゴービ®)
-
・GLP-1受容体作動薬
-
・食欲中枢を抑制し、満腹感を高める
-
・胃排出を遅らせて食欲を減退させる
-
・インスリン分泌促進+血糖値の安定
-
✔️チルゼパチド(マンジャロ®・ゼップバウンド®)
-
・GLP-1とGIPの2つの受容体作動薬
-
・GLP-1による食欲抑制に加え、GIPによって脂肪代謝・エネルギー消費を促進
-
・体重減少と代謝改善の相乗効果が期待
✅ GLP-1とGIPの“ハイブリッド効果”が、マンジャロの大きな体重減少効果に寄与
🔎 実際にどちらを選べばいい?
判断基準 |
推奨薬剤 |
日本国内で保険適応がある薬を使いたい |
一般のクリニックではどちらも不可 |
より大きな体重減少を狙いたい |
チルゼパチド |
副作用をなるべく抑えたい |
セマグルチド |
将来的な体型改善とリバウンド予防を重視 |
チルゼパチド(脂肪代謝を促進効果) +食事・生活指導 |
📝 まとめ:SURMOUNT-5が示したGLP-1薬の進化
- ✔️SURMOUNT-5試験により、チルゼパチドは現行の薬剤で最高クラスのダイエット効果を実証
- ✔️今回の試験では黒人・ラテン系の方々が約半数含まれているものの、日本人に当てはめても体重減少効果はチルゼパチドが現行の治療薬では最強と考えられる。
- ✔️使用経験のある適切な医師のもとでの加療を行うことが重要
当院では総合内科専門医・循環器内科専門医がダイエット外来を行っております。
ご興味のある方は必ず事前予約の上、ご来院ください。
🔗 参考文献
NEJM. 2025. Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of Obesity