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高血圧と認知症はどう関係するのか?
高血圧は「心臓病や脳卒中の原因」として広く知られていますが、実は認知症のリスクを高める要因でもあります。
血圧が高い状態が続くと脳の血管に負担がかかり、小さな脳梗塞や慢性的な血流低下(白質病変)を引き起こしやすくなります。その結果、記憶力や判断力の低下といった認知症につながる変化が起こりやすくなるのです。
特に血管のダメージによる血管性認知症との関係は明らかであり、近年ではアルツハイマー型認知症のリスクとも関連していることが報告されています。
血圧を下げることで認知症リスクは減る?
最新の研究では、血圧をしっかり管理(降圧療法)することで認知症や軽度認知障害の発症リスクを12〜19%減らせる可能性が示されています。
つまり、「血圧を正常に保つこと=将来の脳の健康を守ること」に直結するのです。
米国2025年 ACC/AHA 高血圧ガイドラインのポイント
2025年に改訂された米国のガイドラインでは、脳の健康(認知症予防)がこれまで以上に強調されました。
主な変更点
- 高血圧は認知症リスクを高める強い証拠があると明記
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高血圧の分類は2017年版を踏襲
正常:120/80未満、正常高値:120-129/80未満、ステージ1:130-139/80-89、ステージ2:140/90以上
- 収縮期130mmHg未満/拡張期80mmHg未満を早期から目指すことを推奨
- ステージ2(140/90mmHg以上)は早期の薬物治療による降圧療法が推奨
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新しいリスク計算ツール「PREVENT」を導入し、脳卒中や認知症を含めた将来リスクを総合的に評価
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必要に応じて初期から2種類の降圧薬を併用するなど、従来より積極的な治療方針を提示
日本2025年 高血圧ガイドラインのポイント
日本高血圧学会も2025年にガイドラインを改訂し、全年代で130/80mmHg未満を目標値としました。
主な変更点
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75歳以上の高齢者も含め、すべての人で「130/80未満」を推奨
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2019年版で認められていた「140/90未満」という緩やかな目標を廃止
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「やみくもに下げるのではなく、安全に達成すること」を強調
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家庭血圧測定の普及を推奨し、朝の血圧管理を特に重視
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血圧管理を「脳卒中予防=認知症予防」と位置づけ
高血圧と認知症を防ぐための生活習慣
血圧を下げ、脳を守るには日々の生活習慣がとても大切です。
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塩分を減らす:加工食品や外食の塩分に注意。
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野菜・果物を多く摂る:栄養バランスを整える。
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適度な運動:ウォーキングなどを週150分が目安。
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体重管理:肥満は高血圧と認知症リスクを高める。
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禁煙・節酒:血管を守るために必須。
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睡眠とストレス対策:自律神経の安定は血圧コントロールに有効。
家庭でできる血圧管理
診察室の血圧だけでは不十分です。家庭血圧を測ることで、日常の血圧変動を正しく把握できます。
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起床後1時間以内、排尿後、朝食前・服薬前に測る。
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座って1〜2分安静にしてから測る。
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朝晩2回、1週間以上記録を続ける。
この習慣が「隠れ高血圧」の発見や治療効果の確認につながります。特に起床1時間以内の早朝血圧を125/75mmHg未満に管理することが重要視されています。
まとめ
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高血圧は認知症の大きなリスク因子。
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血圧を管理することで認知症リスクを約12〜19%低下させられる可能性がある。
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米国・日本ともに2025年のガイドラインで「130/80mmHg未満」を基本目標とし、早期からの治療を推奨。
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家庭血圧測定や生活習慣改善を通じて、自分の血圧を主体的に管理することが認知症予防につながる。
高血圧は脳卒中、心筋梗塞、腎疾患等に加え認知症とも関係があることがわかってきました。認知症はご自身の問題のみでなく、現在大きな社会問題にもなっています。健康寿命を損なう大きな原因にもなり得ます。脳の健康を守るために、「血圧を測る・知る・管理する」習慣を今日から始めましょう。
参考文献
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American Heart Association / American College of Cardiology. 2025 ACC/AHA Hypertension Guideline.
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日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2025.
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American Medical Association. High Blood Pressure and Brain Health, 2025.
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厚生労働省関連資料・国内研究報告(高血圧と認知症に関するエビデンス)。