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夏になると気温が高くなり、体調を崩す方が増えてきます。特に高齢の方や持病をお持ちの方にとって、暑さは大きな負担となります。その中でも注意したいのが「循環器疾患(じゅんかんきしっかん)」です。心臓や血管に関わる病気の総称で、冬場だけでなく夏場も発症や悪化のリスクが高まるとされています。
今回は、夏に増える循環器の病気とその理由、そして日常生活の中でできる予防法や対策について、わかりやすくご紹介します。
そもそも「循環器疾患」とは?
心臓や血管など血液循環に関わる病気を「循環器疾患」と呼び、代表的なものに以下のような病気があります。
- 心不全
- 高血圧
- 狭心症や心筋梗塞
- 不整脈
- 脳卒中
これらは寒い冬に多いと思われがちですが、体内の水分量や血圧が大きく変動する夏にも実は注意が必要です。
なぜ夏に循環器の病気が増えるの?
1.脱水(だっすい)
暑い時期は、汗をたくさんかくことで体の中の水分と塩分が失われやすくなります。これを脱水と言い、血圧が低下したり心拍数の増加を引き起こします。
結果として、心臓に負担がかかりやすくなり、不整脈や心不全を引き起こす原因となることがあります。
2.熱中症との関係
夏に多い熱中症も大きな影響を与えます。熱中症になると体温が異常に上がり、血圧が急激に下がることがあります。特に高齢の方や心臓の病気を持つ方は、命に関わる重症化のリスクがあります。
3.血圧の乱れ
一般的に、暑いときには血管が広がって血圧は下がりやすくなります。しかし、クーラーの効いた部屋に急に入ったり、冷たい飲み物を一気に飲んだりすると、血管が急に収縮し血圧が急上昇することがあります。
このような急な変化が、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高める原因になります。
特に注意したい人は?
夏場の循環器疾患のリスクが高いのは、次のような方です。
- ✔️高血圧や心臓病などの持病がある方
- ✔️高齢の方(特に75歳以上)
- ✔️糖尿病や腎臓病を患っている方
- ✔️一人暮らしの高齢の方(体調の異変に気づきにくいため)
夏に気をつけたい循環器疾患の具体例
疾患名 |
症状の例 |
特に多い時期・場面 |
心不全 |
息切れ・むくみ・倦怠感 |
脱水時、無理な運動後 |
狭心症・心筋梗塞 |
胸の痛み・圧迫感・冷や汗 |
気温差が大きい時 |
不整脈 |
動悸・脈の乱れ・めまい |
脱水時・ストレス時 |
脳卒中 |
片側の手足のまひ・言葉が出ない |
暑さと寒さの急変時 |
今日からできる!夏の循環器病対策
1.水分補給は「こまめに、少しずつ」
「のどが渇いてから」では遅いこともあります。1日1〜2リットル程度の水分を、少しずつこまめにとりましょう。特に高齢の方は脱水に気づきにくいので、意識的な水分補給が必要です。
※心不全などで水分制限がある方は、主治医の指示に従いましょう。
2.エアコンの活用は「温度差に注意」
室温は25〜28℃前後が快適とされます。外との温度差が大きすぎると血圧の変動を引き起こすため、急激に冷やしすぎないようにしましょう。
3.塩分・栄養も忘れずに
夏は食欲が落ちがちですが、食事で塩分や栄養を補うことも大切です。冷たい麺類ばかりではなく、バランスよく野菜やたんぱく質も取り入れましょう。
4.睡眠・休息をしっかりとる
夏は夜間の熱帯夜で睡眠不足になりがちです。睡眠不足は血圧や心拍数に悪影響を与えるため、涼しい環境でしっかり休むことが重要です。
5.お風呂はぬるめ・短め
暑い時期に熱いお風呂に入ると、心臓に負担がかかることがあります。ぬるめ(38〜40℃)のお湯に短時間で済ませましょう。入浴後は必ず水分補給を。
症状が出たら我慢しないで早めに受診を
次のような症状があれば、無理をせず、できるだけ早く医療機関に相談してください。
- 胸が締めつけられるように痛い
- 息が苦しい・階段で息切れがする
- 急に脈が速くなったり乱れたりする
- めまいやふらつき、手足のまひ
これらは、循環器疾患のサインかもしれません。特に持病をお持ちの方は、普段と少し違うだけでも早めの対処が重要です。
まとめ
夏は汗をかきやすく、体の水分バランスや血圧が大きく変動する季節です。その影響で、心臓や血管に負担がかかりやすくなります。特に高齢の方や循環器の持病がある方は、熱中症や脱水だけでなく、心臓や血管の病気にも注意が必要です。
夏を健康に過ごすために、日頃の水分補給や温度管理、バランスのよい食事を心がけましょう。そして、少しでも気になる症状があれば、お早めにご相談ください。
当院では、循環器疾患の予防と早期発見に力を入れた診療を行っております。健康診断や血圧のチェックなど、気軽にご相談ください。