生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)
生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)
生活習慣病は食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の死因の上位を占めるがんや心臓病・脳卒中等は生活習慣病に含まれます。以下(図1)に例示するような生活習慣と疾病との関連が明らかになっているものが含まれます。
これらの多くは自覚症状なく進行しますが、例えば糖尿病を長年放置していると糖尿病性網膜症と言って最悪の場合失明してしまったり、糖尿病性腎症を発症し透析になってしまうこともあります。これらはいずれも動脈硬化疾患と強く関係しており死因の上位を占める脳卒中・心筋梗塞の原因にもなります。
こういった観点からも自覚症状の無い初期のうちに生活習慣の改善や投薬を組み合わせ早期に治療介入を開始する事が重要です。治療とは薬を飲むだけでなく生活習慣の改善や食事形態の変更なども治療に含まれます。当院では管理栄養士による栄養指導を組み合わせて治療を行うことが可能です。お気軽にご相談ください。
図1:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより抜粋
病院等での血圧が140/90mmHg以上もしくは家庭での血圧が135/85mmHg以上を高血圧と言います。本邦で推計約4300万人以上罹患していると言われていますが、2016年の厚生労働省の国民健康・栄養調査によると血圧が良好にコントロールできている方はそのうち約1200万人(27%)しかいません。
実際には血圧が高値であっても無症状であることが多いですが、高血圧状態が長く続くと心臓や血管に過剰な負荷がかかり心筋梗塞、脳卒中、腎臓病など重大な健康問題を引き起こすリスクが高まります。
よく「何も症状がないからもう少し様子を見ます・・・」というお話を伺いますがこうしている間にも確実に動脈硬化は進行します。これは脂質異常症や糖尿病も同じです。
実際の降圧目標については年齢や持病の状態により異なります。75歳を境に目標血圧値は異なります。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
75歳未満 | 130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
75歳以上 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
脳血管疾患 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
慢性腎臓病(尿蛋白陰性) | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
2019年 高血圧ガイドラインより改訂
特定の明確な原因がないものを一次性高血圧といい高血圧の大部分がこれにあたります。
対して別の病気が原因で血圧上昇をきたすものを二次性高血圧と言います。これには原発性アルドステロン症といった内分泌疾患や腎疾患、睡眠時無呼吸症候群等が含まれます。二次性高血圧は一般的な降圧剤が効きにくく、一次性よりも若くして高血圧であることがあります。降圧剤も複数種類を組み合わせて治療を行うことが一般的ですが、3種類以上の降圧剤を投与しても血圧管理が不十分である場合を治療抵抗性高血圧と呼びます。
生活習慣・ライフスタイルの是正と内服治療を組み合わせて行います。内服治療ではまず1種類の降圧剤を開始し不十分であれば作用の異なる治療薬を組み合わせて治療を行います。
生活習慣の修正項目では特に減塩の意識が重要となります。(目標:6g/日未満)当院では栄養指導も組み合わせ普段の食生活の状況を伺いながら治療を進めることも可能です。
血中の脂質の濃度が基準値から外れた状態を脂質異常症と言います。大きく分けて以下の4つに分類されます。
図2 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより抜粋 日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.一般社団法人日本動脈硬化学会:東京.2022より改訂
メタボリックシンドロームの診断には血中のHDLコレステロール(善玉)とトリグリセリド(TG:中性脂肪)が用いられますが単独で動脈硬化へ大きく影響を与えると言われているのがLDLコレステロール(悪玉コレステロール)です。高血圧と同様に自覚症状なく動脈硬化を進行させます。
脂質の摂りすぎが最も大きな要因ですが、その他にも甲状腺機能低下症や遺伝的にLDL受容体異常がありコレステロールが高い方(家族性高コレステロール血症)がいらっしゃいます。治療の基本は高血圧と同じく生活習慣是正と内服治療になりますが、家族性高コレステロール血症が疑わしい場合には心筋梗塞や脳梗塞の高リスクであることがわかっており若年であっても早期の内服治療を開始します。
生活習慣是正と投薬治療を組み合わせて行います。治療目標は図2にもあるように通常は140mg/dl未満を目指しますが狭心症や心筋梗塞の既往のある方に関しては100mg/dl未満、中でもリスクが高いと判断された方は70mg/dl未満を目標とすることもあります。ここでは薬物療法を紹介します。
最も使用頻度の高い①スタチンには筋肉痛・筋炎・重篤化すると筋肉が壊死する横紋筋融解症という副作用が報告されています。これらの副作用確認のためにも定期的な血液検査でのフォローが必要です。LDL-Cを厳しく低下させるとプラークが退縮する効果があることはすでに研究で解明されており高リスク症例に関してはより積極的に治療を行うべきとされております。
血糖値が異常に高い状態が続くことを糖尿病と言います。よく耳にすると思い名前からでは重篤なイメージは湧かないかもしれませんが動脈硬化疾患の合併が非常に多いことがわかっています。糖尿病があると
することがわかっており明らかに生命予後を悪くする恐ろしい疾患です。
診断は
を満たすと糖尿病と診断されます。糖分をエネルギーとして変換するためには膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要不可欠で、これが絶対的に不足している1型糖尿病と生活習慣の不摂生によりインスリンの抵抗性増大、分泌低下を起こすことで発症する2型糖尿病とに大別されます。本邦での大部分を占める2型糖尿病について解説します。
初期は無症状ですが増悪するに従い喉の渇き、多尿症状が出現します。その状態が数年以上放置されると神経障害(しびれ)・眼症状(糖尿病性網膜症)・糖尿病性腎症が出現し失明・透析になる方もいます。また脳卒中や心筋梗塞等重篤な動脈硬化疾患合併のほかに感染症に弱くなることもあります。
糖尿病が原因で目の網膜の血管が損傷し、視力低下や失明のリスクがあります。網膜症は進行しやすいため、定期的な眼科検診が必要です。
腎臓の働きが低下し、尿にタンパク質が漏れ出すようになる合併症です。悪化すると透析が必要になることもあります。腎症の予防には、血糖・血圧・コレステロール管理が重要です。
末梢神経が障害され、しびれや痛みを感じやすくなります。また、自律神経にも影響が及び、消化器系や心臓の働きが悪くなることもあります。
動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。血糖コントロールに加え、血圧や脂質異常の管理も大切です。
傷が治りにくく、感染が進行して潰瘍が形成され、最悪の場合は切断が必要になることもあります。足のケアと早期発見が重要です。
規則的な生活、カロリー制限と共に適切な運動、薬物治療を行います。
薬物治療については
①経口血糖降下薬(飲み薬)
②注射製剤(インスリン注射、GLP1受容体作動薬)
を中心に治療を行います。
ここ数年で糖尿病の治療は大きく進展し、S G L T2阻害薬やG L P1受容体作動薬といった新規薬剤が現れました。これらの薬剤は細かい使い分けはありますが心不全や心血管疾患、慢性腎臓病に対しても優れた効果があることが報告されています。1剤で糖尿病・心疾患・腎疾患の治療効果を持つことから近年注目されている領域です。糖尿病は寛解後も再増悪が多く、定期的な血液検査や生活指導が必要になります。近年の研究では減量のみで寛解を維持できる患者様は約6%しかいないという研究結果も出ており治療を途切れさせないことも重要です。当院ではこれらの薬剤調整と栄養指導・減量の指導などを併せて行います。ご不明点等がありましたらご相談ください。
血液中の尿酸濃度が正常値を超える状態を指します。尿酸は、体内でプリン体と呼ばれる物質が分解される過程で生じる最終産物であり、通常は腎臓によって血液から濾過され、尿として体外に排出されます。尿酸の正常値は血清尿酸値7.0mg/dl未満とされており特に8.0mg/dlを超えると痛風のリスクがあると言われます。多くの場合、高尿酸血症自体には明確な症状が現れないことが多いですが、尿酸値が特に高い状態が続くと、痛風や腎結石、腎不全などのリスクが高まります。
まずはプリン体を多く含む食べ物を減らすこととアルコール摂取量の減量が大切です。それでも改善しない場合には尿酸の合成を低下させる薬や、排泄を促す薬を内服します。