循環器内科専門医が解説

LDLが正常でも安心できない?Lp(a)という「測らないと分からない」動脈硬化リスク

健康診断で「コレステロールは正常」と言われた方も。ご家族に若くして心筋梗塞・脳梗塞になった方がいる方には知って頂きたい検査があります。

家族に心筋梗塞・脳梗塞の方がいる LDLは正常なのに動脈硬化を指摘された 脂質異常症の治療中 若くして心筋梗塞を起こした
コレステロールの検査と聞くと「LDL(悪玉)」「HDL(善玉)」「中性脂肪」を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、これら全てが正常であっても、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高いまま見過ごされているケースがあります。その鍵を握るのがLp(a)(リポプロテイン(a)、エルピーエー)です。一般的な健康診断や脂質検査の項目には含まれておらず、意識して検査をしない限り分からないのが特徴です。

01Lp(a)とは何か

Lp(a)は、LDL(悪玉コレステロール)の粒子に、アポリポタンパク(a)という特殊なタンパク質が結合した脂質の一種です。LDLと似た構造を持ちながら、それ単独で動脈の壁にコレステロールを沈着させ、炎症や血栓形成を促進する働きを持つことが分かっています。

Lp(a)が他のコレステロール値と大きく異なる点は、その血中濃度がほぼ遺伝で決まり、生涯を通じてあまり変動しないことです。食事や運動、体重の増減によって変化するLDLコレステロールや中性脂肪とは性質が異なり、一度高ければ基本的にはその値が続きます。逆に言えば、一生に一度測定すれば、その後の経過観察にはあまり大きな意味を持たないとされている検査でもあります。

医師からのひとこと

「LDLコレステロールはしっかり下げているのに、なぜこの方は動脈硬化が進んでいるのだろう」と感じる患者さんに、実際に外来でお会いします。こうしたケースで背景にLp(a)高値が隠れていることは少なくありません。標準的な脂質検査だけでは見えてこない、もう一つのリスクとして知っておいていただきたい項目です。

02なぜ心筋梗塞・脳梗塞のリスクになるのか

Lp(a)が動脈硬化を進める仕組みは、主に3つの作用が組み合わさって起こると考えられています。

動脈壁への沈着
LDLと同様にコレステロールを血管の壁に沈着させ、プラーク(ふくらみ)を形成する
炎症の促進
血管の炎症反応を強め、プラークを不安定にし破れやすくする
血栓のできやすさ
血栓を溶かす働きを妨げる構造を持ち、血管が詰まりやすい状態を作る

国内の冠動脈疾患患者を対象とした研究では、ガイドラインに沿ってLDLコレステロールを55mg/dL未満まで厳格に管理した場合でも、Lp(a)が一定値以上の方では将来の心血管イベント(心筋梗塞や狭心症の悪化など)のリスクが独立して残ることが報告されています[1]。つまり、「LDLを下げているから安心」という考え方が、Lp(a)が高い方には当てはまらない場合があるということです。

また、動脈硬化性疾患の既往がない方を対象とした海外の研究でも、糖尿病や高血圧、喫煙歴などの一般的な危険因子の有無や数にかかわらず、Lp(a)が高いだけで急性心筋梗塞の発症リスクが高まることが示されています[2]。これは、Lp(a)が他の生活習慣関連のリスクとは独立した、別軸のリスク因子であることを意味します。

03こんな方は一度検査を検討してください

Lp(a)は遺伝性が強い因子であるため、特に以下に当てはまる方は、一度測定しておく価値があります。

Lp(a)検査を検討したい方

  • ご家族(親・兄弟姉妹)に、若年(おおむね60歳未満)で心筋梗塞・脳梗塞・狭心症になった方がいる
  • LDLコレステロールが正常域にもかかわらず、健診や検査で動脈硬化(頸動脈プラーク・石灰化など)を指摘された
  • 家族性高コレステロール血症(FH)と診断されている、またはその疑いがある
  • 明らかな生活習慣の問題がないのに、心筋梗塞・脳梗塞を一度経験している
  • 糖尿病や慢性腎臓病があり、心血管リスクをより詳しく評価したい

家族性高コレステロール血症(FH)の方を対象とした国内の研究では、Lp(a)が一定以上(50mg/dL以上)の方は、心臓の血管だけでなく全身の血管に動脈硬化が広がる「Polyvascular Disease」を発症しやすい高リスク群であることも報告されています[3]。FHの診断を受けている方にとっては、特に確認しておきたい項目といえます。

04基準値と検査の受け方

Lp(a)の基準値については、国内外でおおよそ30mg/dLまたは50mg/dLがカットオフ値として提唱されており、これを超えると心血管疾患リスクが上昇するとされています[4]。ただし、測定方法によって数値の出方に差があることが知られており、現在、国内外の学会で測定値の標準化が進められている段階です[5]

項目 LDLコレステロール Lp(a)
変動要因 食事・運動・体重で変化しやすい 遺伝的にほぼ一定、生涯不変
健診での測定 標準項目に含まれる 含まれていない(要追加検査)
測定の頻度 定期的に確認 基本的に一生に一度でよい
下げる専用薬 スタチン等で確立 専用薬は国内未承認(既存薬に付随効果あり)

通常の血液検査に追加する形で測定が可能で、結果は数日程度で分かります。なお、Lp(a)だけを選択的に大きく下げることを目的とした専用薬は、現時点(2026年)では国内で承認されたものがありません。これについては次の章で、既存薬の「付随効果」と、現在開発中の専用薬とを分けて整理します。

05Lp(a)が高いと分かったらどうするか

「専用の治療薬がないなら、測っても意味がないのでは」と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。Lp(a)が高いと分かった場合、現時点での現実的な対策は以下のように整理できます。

既存薬の「付随効果」としてのLp(a)低下

厳密にはLp(a)を主な標的として開発された薬剤ではありませんが、LDLコレステロールを下げる目的で使われる以下の薬剤には、臨床試験でLp(a)を一定程度低下させる作用が確認されています。

レパーサ皮下注(エボロクマブ)
レパーサ
一般名:エボロクマブ/PCSK9阻害薬(2週または4週ごとの皮下注射)
本来はLDLコレステロールを強力に低下させる目的で使用される薬剤です。

FOURIER試験:Lp(a)を中央値約27%低下[6]

レクビオ皮下注(インクリシラン)
レクビオ
一般名:インクリシラン/PCSK9 mRNAを抑えるsiRNA製剤(年2回の皮下注射)
本来はLDLコレステロールを長期間にわたり低下させる目的で使用される薬剤です。

ORION-10/11試験:Lp(a)をプラセボ比約19〜26%低下[7]

これらの薬剤はいずれも、本来はLDLコレステロールを大きく下げる目的(家族性高コレステロール血症や、生活習慣の改善・スタチンだけでは目標値に届かない方など)で使用が検討される薬剤です。Lp(a)の低下幅もLDLコレステロールの低下幅(50〜60%前後)に比べると控えめで、Lp(a)単独の数値を正常域まで下げきれるとは限りません。それでも、LDLとLp(a)の両方が高い方にとっては、一つの治療で両方のリスクに働きかけられるという意味で、治療選択の際に考慮される情報のひとつです。

医師からのひとこと

レパーサやレクビオは、あくまでLDLコレステロールを下げるための薬として保険適用や治療方針が決まっており、「Lp(a)を下げるために使う」薬ではありません。ただ、結果として一定の低下が見込めるという臨床データがあるのは事実です。Lp(a)が高いという理由だけでこれらの薬の使用が決まるわけではなく、LDLの値や全体のリスクを踏まえて、使うべきかどうかを医師と一緒に判断することになります。

専用薬の開発状況

Lp(a)そのものを大きく(70〜80%程度)低下させることを目的とした、アンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAを用いた専用薬が国内外で開発中です。これらは現時点では国内未承認ですが、心血管イベント抑制効果を検証する大規模臨床試験が進行しており、結果次第で今後の診療に新たな選択肢が加わる可能性があります[8]

今すぐできる対策

1

他の危険因子をより厳格に管理する

Lp(a)自体を下げる薬がない以上、LDLコレステロール・血圧・血糖・禁煙など、コントロール可能な危険因子をより積極的に管理する方針が基本になります。

2

LDLの治療を強化する

スタチンに加え、必要に応じてエゼチミブやPCSK9阻害薬(レパーサ等)、インクリシラン(レクビオ)などでLDLコレステロールの目標値をより厳しく管理します。上記の通り、これらの薬剤はLp(a)にも一定の低下効果を持ちます。

3

全身の血管をスクリーニングする

頸動脈エコー・心エコー・必要に応じて冠動脈CTなど、他の血管に動脈硬化が広がっていないかを確認し、早期に介入します。

4

家族にも検査を勧める

遺伝性が強い因子のため、血のつながった家族(親・兄弟姉妹・子)にも測定を勧めることで、家族全体のリスクを早期に把握できます。

Lp(a)は「測ったその日から生活が変わる検査」ではなく、「自分や家族の将来のリスクを知り、他の管理を強化する判断材料にする検査」と捉えるのが実情に近い理解です。

気になる方は、循環器内科専門医にご相談ください

ご家族の病歴やこれまでの検査結果を踏まえ、Lp(a)検査の必要性や、現在の脂質管理の方針について丁寧にご説明します。健診結果をお持ちいただくとスムーズです。

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文責:わらび内科・循環器内科クリニック 院長 髙橋/総合内科専門医・循環器内科専門医

循環器内科を専門とし、脂質異常症・動脈硬化性疾患の診療を中心に、生活習慣病の予防から心臓病の専門的治療まで幅広く対応しています。

参考参考文献

  1. 国立循環器病研究センター. LDLコレステロールを厳格に下げても、リポプロテイン(a)[Lp(a)]高値は心血管イベントの「残余リスク」. 2026年5月. https://www.ncvc.go.jp/hospital/topics/topics_37353/
  2. 佐古絵理. 高Lp(a)は危険因子数にかかわらずMI発症リスク. 日経メディカル. 2024年8月. (出典:J Am Heart Assoc. 2024年5月掲載)https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/202408/585292.html
  3. 国立循環器病研究センター プレスリリース. 家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体における高Lp(a)血症とPolyvascular Disease発症との関連について. https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_33932/
  4. 日本動脈硬化学会(編). 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
  5. ケアネット. Lp(a)測定の国際標準化、新薬登場までに解決か/日本動脈硬化学会. 2025年3月. https://www.carenet.com/news/general/carenet/60329
  6. Sabatine MS, et al. Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease (FOURIER). N Engl J Med. 2017;376(18):1713-1722.(Lp(a)サブ解析:O'Donoghue ML, et al. Circulation. 2019;139(12):1483-1492.)
  7. Ray KK, et al. Two Phase 3 Trials of Inclisiran in Patients with Elevated LDL Cholesterol (ORION-10/11). N Engl J Med. 2020;382(16):1507-1519.
  8. Tsimikas S, et al. NHLBI Working Group Recommendations to Reduce Lipoprotein(a)-Mediated Risk of Cardiovascular Disease and Aortic Stenosis. J Am Coll Cardiol. 2018;71(3):177-192.
  9. Nordestgaard BG, et al. Lipoprotein(a) as a cardiovascular risk factor: current status. Eur Heart J. 2010;31(23):2844-2853.

※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を保証するものではありません。Lp(a)の基準値・測定方法・治療方針は今後のガイドライン改訂や新薬の承認状況により変わる可能性があります。ご自身の状況については、必ず医療機関で医師にご相談ください。
文責:髙橋 剛士(総合内科専門医・循環器内科専門医) わらび内科・循環器内科クリニック 院長